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シグモイド関数を永遠に微分しまくる罰

――20XX年、世界は戦火に包まれた。

 人々は恐慌した社会の中で、自身が生き抜く術を身に着けた!それは日本も例外ではなかった――

 

 20XX+10年、日本の元都道府県であった、京都自治区、大阪自治区、そして滋賀自治区を筆頭に、関西連合が日本国政府に宣戦布告をした。関西連合は、ありあまる金属(主に大仏を溶かして作った)を元に武器の大量生産を可能にしていた。

 関西連合は、名古屋自治区との不可侵協定を結んだ。名古屋自治区はこれに従い名古屋港の封鎖を決定。これは日本国政府にとって貿易の大動脈が断たれた事を意味した。

 一方関西連合は、大阪港、神戸港より、兵士を派遣した。そこには、1万名の兵士のほか、元奈良県、現在の大和連合の南側で育った特殊部隊も参戦していた。彼らは、祖国の寺社を燃やしてまで、日本国政府への反抗を誓った、勇猛果敢な戦士であった。

 負けじと政府は、九州自治区と関西連合に悟られぬよう、裏で不可侵条約を結び、反撃の用意をしていた。西側の自衛隊は、すでに機能しない事がわかっていた。しかし自衛隊が全部隊揃わない限り、関西連合への反撃の目処が立たない。そこで、彼らは徴兵を行う事にした。日本国憲法において徴兵は禁じられているが、この有事の際、政府の中にこのような事を気にする人はいなかった。

 この事は、後の甲信越連合の誕生につながるが、これはまた別の話。

 そのような中、市ヶ谷の防衛省内部にある自衛隊の情報本部、内閣官房が合同で情報戦を始めた。彼らはまず、京大、阪大、名大を除く4つの旧帝大を筆頭とする大学群の援助の元、関西連合のメインシステムへ攻撃するためのウイルスを開発した。そしてこのウイルスを確実に送り込むため、物理的にメインシステムに侵入して、バックドアを仕掛ける必要があった。

 このバックドアを仕掛けるため、特殊派遣官Aが指名された。

 Aは京大にあるメインシステムへ向かうため、日本国政府と緩衝地域である名古屋自治区を結ぶ「東海道新幹線」と、名古屋自治区から関西連合の領域を結ぶ「山陽新幹線」を乗り継ぎ、新大阪へと降り立った。

 駅を降りたAであるが、ここで京大の情報員により身柄を確保された。

 Aは京大の一部を改造して作られた独房へと連れて行かれシグモイド関数を永遠に微分しまくる、という罰を与えられた。

 彼は文系の出身であったがために、ネイピア数微分がわからず、精神崩壊を起こした。これにて、日本国政府の情報戦は失敗に終わった。